コラム

事故物件で団信が下りないときどうする?住宅ローン残債の処理方法・相続・任意売却

ご主人が自死で亡くなられ、さらに団体信用生命保険(団信)の免責条項に該当して保険金が下りず、多額の住宅ローン残債と事故物件を抱えてしまった。深い悲しみのなか、今後の生活やローン返済への不安が重くのしかかっている方もいらっしゃるかもしれません。

このような状況で「自宅を相続すべきか、放棄すべきか」「相続するなら、残された住宅ローンをどう処理すればいいのか」を判断するための材料を、本記事では順に整理していきます。ご自身の状況に当てはめながら、お読みいただければ幸いです。

この記事でわかること

  • 団信に免責期間が設定されている理由と具体的な年数
  • 団信が下りない場合、ローン残債が誰に引き継がれるのか
  • 相続放棄・限定承認・単純承認の3つの選択肢と判断基準
  • 事故物件の売却価格が相場からどの程度下落するかの目安
  • オーバーローンになった場合の対処法と任意売却の仕組み

 

夫の自死で団信が下りない場合の住宅ローンの扱いと法的責任

団信が下りず住宅ローンの返済に悩む女性のイラスト

ご主人が残された住宅ローンについて、「団信に入っていたのになぜ払われないのか」「この借金は誰が背負うことになるのか」と、疑問や不安を抱かれていることでしょう。

ここでは、団信が支払われないケースと、保険金が下りなかった場合にローン残債が法律上どのように扱われるのかを解説します。

1-1. 団信が支払われない主なケース

団信は本来、契約者が亡くなった場合に保険金で住宅ローン残債が完済される仕組みですが、以下のようなケースでは保険金が支払われません。

免責期間内の自死

加入から一定期間内(機構団信は1年以内、民間銀行団信も1年が主流、保険会社や商品によっては3年)の自死は免責特約の対象となり、保険金は支払われません。

告知義務違反

契約時に持病や既往歴を正しく申告していなかった場合、契約解除や保険金不払いの対象となります。

保険料・住宅ローンの滞納による契約失効

保険料や住宅ローンの支払いを延滞して契約が失効していた場合、保険金は支払われません。

保障開始日以前からの傷病が原因の死亡

契約前から罹患していた病気が原因で死亡した場合、原則として保険金支払いの対象外となります。

ご自身のケースがどれに該当するかを確認するためにも、まずはご主人が加入されていた団信契約の約款や規定、銀行や保険会社からの通知書を改めて確認しておきましょう

1-2. 団信免責でローン残債は法定相続人に引き継がれる

団信による保険金が下りなかった場合、ご主人の住宅ローン残債は消滅せず、相続人であるご家族に引き継がれることになります。

相続では、家などのプラスの財産とともに、借金などのマイナスの財産も法定相続分に応じて引き継ぐのが原則です。住宅ローン残債もこのマイナスの財産にあたるため、ご主人名義のローンを、奥様やお子様が法定相続分に応じて引き継ぐことになります

出典:e-Gov法令検索『民法第896条

 

1-2-1. うつ病などの精神疾患が原因の自死は団信が下りる可能性がある

なお、ご主人がうつ病などの精神疾患により、自由な意思決定能力を喪失、あるいは著しく減弱させた状態で自死に及んだと判断されれば、免責特約の対象外として保険金が支払われる可能性があります。

思い当たる節がある場合は、自死遺族支援弁護団など、自死をめぐる保険問題に詳しい専門家への相談を検討してみてください。

次章からは、団信が下りないままローン残債が残ったとき、どう向き合っていけばよいのかを具体的に解説していきます。

相続放棄か相続承認か?ローン残債と家の価値から考える判断基準

家の価値とローン残債の差額を計算するイラスト

ご主人が残された住宅ローンや不動産を今後どうすべきか決めるためには、まず「相続」をどのように扱うかを判断しなければなりません。

相続には、すべての財産と借金を手放す「相続放棄」、条件付きで引き継ぐ「限定承認」、そしてすべてを引き受ける「単純承認」という3つの選択肢があります。

どの方法がご自身の状況に最も適しているかを見極めるためには、現在の「家の売却価値」と「ローン残債」の差額を正確に把握する必要があります。ここからは、3つの選択肢それぞれの判断基準を見ていきます。

2-1. 事故物件の売却価格は相場から20〜30%下落する

室内で自死(自殺)が発生した物件は「心理的瑕疵(かし)」があるとみなされ、一般的な市場価格よりも安く取引されます。

事故物件の売却価格は、相場の2〜3割減になるのが一般的ですが、状況によっては1〜5割ほどと幅があります

なかでも自死の場合は、心理的瑕疵の程度が重く、相場より2〜3割下落するのが目安となります。ただし同じ自死でも、室内の状況によって幅があるのが実情です。

下落幅を左右するのは、立地条件のほか、発見までの時間、室内の汚損度合い、特殊清掃の規模、報道の有無といった要因です。早期に発見されて室内の汚損が少ないケースでは下落幅が1割程度にとどまることもある一方、発見が遅れて腐敗が進み特殊清掃が必要になったケースや、報道で広く知られた事案では、3割を超える下落、あるいは半額以下まで落ち込むこともあります。

つまり、物件の特性や発見時の状況によっては、想像以上に売却価格が下がる可能性があるということです。そのため、残った住宅ローンと売却額を比較した際、売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」状態に陥る可能性が高いことを、あらかじめ覚悟しておく必要があります。

 

2-2. 単純承認して住み続ける/売却するという選択肢とハードル

ご主人の住宅ローンを「単純承認」で引き継いだ場合、家の名義とローン残債の返済義務の両方が奥様へ移ることになります。この場合の選択肢は「借り換えて住み続ける」か「売却する」の2つです

2-2-1. 住み続ける場合

ご主人の名義で組まれたローンを奥様単独の名義に借り換える際、奥様ご自身の返済能力が改めて審査されます。専業主婦やパート勤務などで返済能力が不足すると判断されれば、借り換えは認められません。

なお、債務者の死亡を理由に銀行から残債の一括返済を求められるケースもありますが、近年は金融庁の要請を受けて、遺族にこれまで通りの毎月返済を継続させる銀行も増えています。まずは、返済期間の延長や金利見直しを含めて、融資先の金融機関に交渉の余地を探ってみてください

同時に、自死のあった家に住み続けることの精神的負担についても冷静に検討する必要があります。もし心理的に住み続けることが苦しいと感じる場合は、無理をせず売却の検討に切り替えることも大切です。

2-2-2. 売却する場合

売却額がローン残債を上回る(アンダーローン)のであれば、通常通りに売却してローンを完済することが可能です

一方、売却しても残債が残ってしまう「オーバーローン」の場合は、次章で解説する「任意売却」などの方法を検討する必要があります。

2-3. 完全なオーバーローンなら「相続放棄」が合理的

住宅ローンの残債が家の価値を大幅に上回っており、かつ他に守るべき預貯金などのプラス財産がない場合、最も確実な解決策となるのが「相続放棄」です。

相続放棄をすれば、マイナスの財産であるローン残債を引き継がずに済みます

ただし、相続放棄には3つの注意点があります。家庭裁判所への申述を「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があること、一度受理されると原則として撤回できないこと、そして預貯金など他のプラス財産もすべて失うことです。

もし3ヶ月の期限内に財産や借金の全容を把握しきれない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てれば、1〜3ヶ月程度の伸長が認められます。ただし審判決定まで1〜2週間ほどかかるため、期限ギリギリではなく早めに動きましょう。

出典:e-Gov法令検索『民法第915条

2-4. 家を残したい場合の「限定承認」のハードルと注意点

借金を引き継ぐのは怖い一方で、「家だけはどうしても残したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。そのような場合、プラス財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ「限定承認」を選び、「先買権(さきがいけん)*」を行使してご自身で自宅を買い取るという制度があります

しかし、限定承認には実務上の高い壁があります。具体的には、相続人全員の同意が必須であること、官報公告や財産管理などの手続きが複雑で完了までに1年以上かかることが多い点などが挙げられます。

さらに、税務上は時価で売却したとみなされ「みなし譲渡所得課税」が発生する可能性があり、結果的に手元に残る資産が減ってしまうリスクも伴います。

実際、相続放棄が年間約30万件利用されているのに対し、限定承認は年間700件程度にとどまっており、実務上ほとんど選ばれていない選択肢と言わざるを得ません。

 

※限定承認をした相続人が、競売にかける前に自宅などの相続財産を優先的に買い取れる権利

オーバーローン状態だったときの対処法

オーバーローンへの対処法を検討する女性のイラスト

前章でご説明した通り、事故物件となった家を売却してもローン残高に満たない「オーバーローン」に陥るケースは少なくありません。しかし、オーバーローンだからといって解決策がないわけではありません。

ここからは、自己資金による補填や金融機関の合意を得て売却する「任意売却」など、借金を整理して生活を再建するための方法を見ていきます。

3-1. 自己資金で残債の差額を埋めて通常売却

売却代金でローンを完済できない場合でも、不足分を自己資金で補うことができれば、通常の不動産売却として手続きを完結させることが可能です。

ご自身の預貯金や退職金、あるいは親族からの援助などで差額を埋められるのであれば、信用情報(いわゆるブラックリスト)に傷がつくこともなく、今後新たなローンを組んだりクレジットカードを作ったりする際にも影響が出ません。そのため、最も理想的な選択肢といえます。

しかし、自死のあった事故物件は売却価格の下落幅が大きくなりやすく、ローン残債との差額が数百万円から1,000万円以上の規模に膨らむことも珍しくないというのが実情です。差額を何とか埋めようと手元の資金をすべて使い切ってしまうと、その後の生活費が足りなくなる事態にもなりかねません。

無理にすべての差額を自己資金で埋めようとするのではなく、その後の生活も含めて慎重に判断してください。

3-2. 金融機関の合意を得て売却する任意売却

自己資金で差額を埋められないオーバーローンの状態では、金融機関が設定している「抵当権」を外すことができず、そのままでは家を売却できません。しかし、売却できないまま返済が滞れば、最終的には家を差し押さえられ、裁判所によって競売にかけられてしまいます。

この差し押さえや競売を避ける方法が、債権者(金融機関)の合意を得て売却を行う「任意売却」です。任意売却なら、競売よりも市場価格に近い金額で売却できる可能性があります

また、金融機関との交渉次第では、売却代金の中から引越し費用を捻出することを認めてもらえる余地も残されています。

3-3. 任意売却後の残債は分割返済が可能

任意売却後に残債が残ると、一括で返済を求められるのではないかと不安に思うかもしれませんが、実務上、すぐに一括返済を求められることはほとんどありません。

多くの場合、現在の収入や支出を記した「生活状況確認表」などを提出して交渉することで、月々5,000円から3万円程度の無理のない範囲での分割返済を交渉することが可能です

いきなり弁護士を雇って自己破産などの手続きに踏み切らなくても、無理のない返済方法を見つけられるケースは多々あります。一人で抱え込む前に、任意売却に詳しい不動産会社に相談してみてください。

事故物件のローン問題は買取査定が解決への第一歩

事故物件のローン問題を解決する方法を提案する女性のイラスト

オーバーローン状態に陥った事故物件を売却し、残債を整理していくためには、どこに売却を依頼するかが非常に重要です。一般の不動産市場で買い手を探すか、専門業者に直接買い取ってもらうかで、解決までのスピードや売却後のリスクは大きく変わってきます。

ここからは、一般仲介を利用する際のリスクと、専門の買取業者を活用するメリットを順に紹介します。

4-1. 事故物件を一般仲介で売る難しさとリスク

任意売却の手段として一般の不動産仲介を選んだ場合、個人の買い手を探すのにはハードルが存在します。

自死が起きた事故物件に対しては、強い心理的抵抗を感じる人が多いのが現実です。そのため、市場の相場より価格を下げて売りに出しても、内見の申し込みすらなかなか入らず、売却期間が数ヶ月から年単位で長期化することも珍しくありません。いつ売れるかわからない状況のまま、金融機関への対応や物件の維持管理を続けるのは、ご遺族にとって大きな精神的負担となります。

さらに、運良く一般個人の買い手が見つかったとしても、売却後の法的リスクが残ります。引き渡し後に買主から「実際に住んでみたら、想定以上に心理的負担が大きかった」などと主張され、民法上の「契約不適合責任」を問われる恐れがあるためです。

もし契約不適合責任に問われれば、売買代金の減額損害賠償、最悪の場合は契約解除を請求される可能性もあります。

 

4-2. 事故物件専門業者なら現状有姿・免責で売却可能

ご遺族の精神的な負担や売却後のトラブルを少しでも減らす方法として、事故物件や任意売却のノウハウを持つ専門の買取業者に直接買い取ってもらうという選択肢があります。

専門業者は不動産取引のプロであるため、事故の状況を正直に伝えれば、引き渡し後の契約不適合責任を免除する特約を設けられるのが一般的です

また、専門業者による買取であれば、特殊清掃や遺品整理が済んでいない、いわゆる「現状有姿」のままでも売却が可能です。事前の片付け費用や手間がかからないうえに、業者自身が買主となるため、最短数日から数週間で現金化できる可能性があります。

一般仲介で売却期間の長期化や法的リスクを抱え続けるよりも、専門業者へ直接買取を依頼するほうが、ご遺族にとって安全かつ確実な選択肢と言えます。

まとめ:事故物件の住宅ローンに悩んだらまずは無料査定を

事故物件の無料査定を提案する女性のイラスト

この記事のまとめ

  • 団信の免責期間は加入後1年が主流。まずは団信契約の約款を確認する。
  • 団信が下りなかった場合、住宅ローン残債はマイナスの財産として法定相続人に引き継がれる。
  • 相続には「相続放棄」「限定承認」「単純承認」の3つの選択肢があり、3ヶ月の熟慮期間内に判断する必要がある。
  • 事故物件の売却価格は相場の2〜3割減が中央値で、オーバーローンに陥った場合は任意売却で対処できる。
  • 任意売却後の残債は月5,000円から3万円程度の分割返済が可能。事故物件専門の買取査定に依頼するのが安全。

ご自身の状況によって、相続放棄が合理的なのか、相続を承認して売却するのかは変わります。しかし、どの道を選ぶにしても判断の出発点になるのは、家の現在価値とローン残債の差額を知ることです

記事を読んでも判断に迷う、自分の物件がどう扱われるか知りたい。そんな段階でも構いません。ラクウルでは、無理な勧誘なし・相談無料で、専門スタッフが状況に合わせてお答えします。お電話での聞き取りや訪問査定をご希望でない場合は、メールのみでのやり取りも可能です。

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この記事のまとめQ&A

夫が自死で亡くなり団信が下りない場合、住宅ローンはどうなりますか?

団体信用生命保険(団信)が免責となった場合、住宅ローン残債は消滅せず、相続財産として法定相続人に引き継がれます。まずは団信の約款や銀行・保険会社からの通知を確認しましょう。

団信が支払われないのはどんなケースですか?

主なケースは、加入後一定期間内の自死(免責期間内)、告知義務違反、保険料や住宅ローン滞納による契約失効、保障開始前からの傷病が原因の死亡などです。条件は保険会社や商品によって異なります。

事故物件になった家はどれくらい価格が下がりますか?

自死が発生した事故物件は心理的瑕疵があるとされ、一般的には相場の20~30%程度下落するとされています。ただし、発見状況や特殊清掃の有無、報道の影響などによって変動します。

住宅ローンが家の価値を上回るオーバーローンの場合はどうすればいいですか?

自己資金で不足分を補えれば通常売却が可能です。難しい場合は、金融機関の同意を得て売却する「任意売却」を検討します。任意売却なら競売より市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。

住宅ローンが大幅なオーバーローンなら相続放棄した方がいいですか?

住宅ローン残債が家の価値を大きく上回り、他に守るべき資産が少ない場合、相続放棄は有力な選択肢です。ただし、預貯金などプラスの財産も含めて放棄することになるため慎重な判断が必要です。

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