コラム

事故物件を賃貸に出す前に知っておきたい費用とリスク、売却の話

賃貸に出すか、手放すか。

頭では「そろそろ決めないと」と分かっていても、事故物件になってしまった家のこととなると、どうしても気持ちが止まってしまう方は多いと思います。

「事故物件として扱われるのか」「いくらぐらい家賃を下げないと借り手がつかないのか」「告知義務やトラブルが怖い」といった不安が、最後の一歩を踏み出すのを止めているのではないでしょうか。

本記事は、「賃貸に出す/出さない」を白黒つけることが目的ではありません。「自分の場合、本当に賃貸を選びたいのか」「それとも手放す方向も含めて考え直したほうが楽になれそうか」を落ち着いて考えられる状態を目指します

今はまだ決断できなくて大丈夫です。

ただ、「何となく不安だから動けない」という状態から一歩抜け出すために、まずは事実ベースで一緒に整理していきましょう。

 

この記事でわかること

  • どんなケースが「事故物件」として扱われるのかという基準
  • 事故物件を賃貸に出すときの家賃水準
  • 賃貸に出す前に必要になる遺品整理・特殊清掃・リフォーム費用の目安
  • 事故物件の賃貸運用が向いているオーナーと向いていないオーナーの違い
  • 賃貸か売却か迷ったときに専門業者へ相談する意味とタイミング

 

事故物件でも賃貸に出せる?まず押さえるべき定義と告知義務

事故物件を賃貸に出す際の定義や告知義務を確認するチェックリストのイラスト

事故物件を賃貸に出せるかどうかを考えるうえで、最初につまずきやすいのが「そもそも自分の家は事故物件に当たるのか」「どこまで説明しなければならないのか」という点です。

まずは、事故物件の基本的な捉え方と、賃貸オーナーに求められる告知義務の考え方を確認していきましょう。

「孤独死=必ず事故物件」ではない:事故物件の基本的な考え方

孤独死や自宅での死亡があったとき、「もう完全に事故物件になってしまった」と感じてしまうかもしれませんが、実務上はもう少し細分化されています。

不動産の取引において、「事故物件」という言葉は、人の死などにより心理的な抵抗が生じる物件(心理的瑕疵物件)の意味が使われることが多いです。

どのような出来事が心理的瑕疵に当たるかについて、法律にはっきりした条文はありませんが、裁判例や実務、国土交通省のガイドラインによって、大まかな判断の枠組みが示されています。

ポイントは「何が起きたか」だけではなく、どのような状況で、どの程度の影響が残っているかまで含めて総合的に見ていく、ということです。具体的には、以下のような要素が重なり合って、「心理的瑕疵があるかどうか」が判断されます。

  • 死因(自殺や事件性のある死か、自然死か)
  • 発見されるまでの時間(すぐに見つかったのか、長期間放置されたのか)
  • 室内の損傷や臭気の程度(特殊清掃が必要なレベルかどうか)

次の節では、上記の考え方を踏まえて、自殺・孤独死・自然死などそれぞれのケースが、実務上どのように扱われているかを具体的に見ていきます。

 

孤独死・自然死・自殺などケース別の告知の必要性

国土交通省ガイドラインを踏まえ、賃貸取引で「原則として告知が求められやすいケース/原則として告知を要しないとされるケース」を分けると、以下のとおりです。

 

原則として告知が求められやすいケース

  • 室内や共用部での自殺
  • 室内や共用部での他殺・傷害致死など事件性のある死亡
  • 特殊清掃等が行われた自然死や、日常生活の中での不慮の事故死
  • 死後長時間放置された孤独死で、腐敗や体液により床・壁が汚損している
  • 腐敗臭や害虫が発生し、特殊清掃や大規模なリフォームが必要になったケース

 

原則として告知を要しないとされるケース

  • 病死や老衰による自然死(家族が看取った/比較的早期に発見された場合)
  • 階段からの転落・浴室での溺死など、日常生活の中で起こり得る不慮の事故死
  • 死後まもなく発見された孤独死で、室内の損傷が軽微で特殊清掃も不要なケース
  • 共用部のうち、住民がほとんど利用しない場所での自然死・不慮の事故死

上記を見ていただくと分かる通り、告知が必要になるかの目安は「どんな亡くなり方だったか」と「どんな状態で見つかったか」によって変わります。

そのため、「自宅で孤独死があったから、絶対に事故物件だ」と決めつける必要はなく、死因・発見までの時間・室内の状態を踏まえて判断することが大切です。

 

賃貸オーナーに求められる告知義務の範囲と期間

「事故物件を賃貸に出すとして、どこまで話さないといけないのか」が分からないと、不安を抱えたまま一歩踏み出せないままになってしまいます。ここでは、国土交通省ガイドラインの考え方を押さえておきましょう。

まず、ガイドラインによると、自殺・他殺、または特殊清掃が行われたケースでは、「事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間」は新たな借主に告知することが求められています。報道で広く知られた事件や社会的影響が大きいケースでは、3年経過後も説明が必要と判断されることもあります。

一方、自然死や日常生活で起こり得る事故死で、特殊清掃を要しない場合は、原則として告知不要とされていますが、「ここで人が亡くなったことはありますか」と聞かれた場合には、分かっている範囲で事実を伝える必要があります。

賃貸契約では、借主の判断に大きく影響する事実を隠したまま契約すると、後から「そんな話は聞いていない」と争いになるリスクがあります。「黙っていれば分からないだろう」と考えるのは自然ですが、発覚したときに家賃減額や引越し費用などの負担が発生する可能性がある、という点は知っておきましょう。

 

事故物件として貸す場合の家賃・募集条件への影響

事故物件の賃貸で家賃設定や募集条件を確認している様子のイラスト

事故物件として貸し出す場合、多くのオーナーさんが感じるギャップは「こんなに家賃を下げないと借りてもらえないのか」という点です。それでもすぐに申込が入るとは限らず、何ヶ月か空室が続き、途中でさらに家賃を下げざるを得ないことも珍しくありません。

実務では、同じエリア・同じ間取りの通常物件と比較して、周辺相場から2~3割ほど下げて募集するケースが多く見られます。ただ、家賃を下げればすぐ決まる、という単純な話ではないのも事実です。

というのも、どのくらい下げれば、どのくらいの期間で入居者が見込めそうかは、次の要素によって大きく変わります。

  • 死因が自殺・他殺なのか、長期間放置された孤独死なのか
  • 死後の放置期間や室内損傷の程度、臭いがどこまで残っているか
  • 物件のタイプ(戸建て/分譲マンション/アパート)
  • 都心駅近なのか、郊外・地方なのかといったエリアの賃貸需要

たとえば、自殺や長期放置の孤独死で特殊清掃・リフォームが必要だった一戸建ての場合、相場よりかなり家賃を下げても、「数か月〜半年以上空室」という覚悟が必要になることもあります。一方、需要の高い駅近マンションであれば、同じ事故物件でももう少し短い期間で決まるかもしれません。

このように、「相場より少し安く出せばすぐ埋まる」というイメージでいると、想像以上に空室期間が長引いたり、追加の値下げを迫られたりする可能性があるため注意が必要です。

事故物件を賃貸に出す前に必要になる初期費用とその後の負担

事故物件を賃貸に出す前にかかる初期費用や継続的な負担を確認している様子のイラスト

「とりあえず賃貸に出してみよう」と思っても、事故が起きた部屋をそのまま人に貸せることはほとんどありません。ここでは、貸し出し前にかかる初期費用と、その後続いていくコストを整理してお伝えします。

賃貸に出すためのリフォーム・特殊清掃・遺品整理の費用感

事故物件を賃貸に出す前に必要になるのは、「今の家を、人が安心して住める状態に整えるための初期コスト」です。

遺品整理の費用

まず行うことになるのが遺品整理です。荷物量にもなりますが、1Kでも5万~15万前後、戸建てになると30万~80万程度かかることもあります。

特殊清掃の費用

次に、死後の放置期間が長く、腐敗や体液・臭気が残っている場合は特殊清掃が必要です。表面の掃除だけではなく、床材や壁材の内部に染み込んだ汚れや臭いまで除去し、場合によってはオゾン脱臭などの専門的な作業も行います。

ニオイや汚れが軽度なら数十万円規模で収まることもありますが、汚染が広がっている場合はさらに高額になることもあります

リフォームの費用

室内の状態が悪く、内装や設備を含めてリフォームを行う場合の必要はさらに高額です。壁紙や床の全面張り替えだけでも数十万円~、水回り(キッチン・浴室・トイレなど)の入れ替えまで行うと、100万~200万円規模になるケースもあります

このように、「賃貸で様子を見る」つもりであっても、募集開始までにまとまった費用が必要になる可能性もある、という点は押さえておくと安心です。

 

賃貸に出した後に続く「固定費・空室・トラブル対応」という継続コスト

初期費用をかけて貸し出せる状態にしても、そのあとは「持っている限りずっと続く負担」と向き合うことになります。

固定資産税・都市計画税・管理費

不動産を所有している間は、毎年固定資産税や都市計画税がかかり、分譲マンションであれば管理費や修繕積立金も発生します。

戸建ての場合でも、庭木の手入れや外構の簡単な補修など、最低限の維持管理は必要です。

空室リスク

先述の通り、事故物件として貸し出す場合、相場より家賃を下げても、すぐに入居が決まるとは限りません。

数ヶ月~半年以上、空室のまま家賃収入ゼロが続き、その間も税金や管理費だけは出ていく、という状況も十分あり得ます。

入居者トラブルや心理的な負担

「前の方がなぜ亡くなったのか」「近所の人はどこまで知っているのか」といった借主からの質問に答えたり、告知内容について不安や疑問を持った入居者から相談を受けたりする場面もあり得ます

きちんと事前に説明していれば、それだけを理由に家賃減額が認められるケースは多くありませんが、説明不足だと「聞いていた話と違う」と受け取られ、減額や早期退去の交渉に発展する可能性もゼロではありません。

また、集合住宅であれば、「あの部屋でこんなことがあったらしい」といったうわさ話が広がり、近隣からの視線に疲れてしまうオーナーさんも少なくありません。

こうした点を踏まえると、「賃貸に出せば一度楽になる」というよりも、初期投資に加えて、その後の固定費・空室リスク・人間関係のストレスを引き受ける”大家業”を続ける選択になるのが多いのが実情です。

その覚悟を持てるかどうかが、賃貸に踏み切るかを考えるうえでの一つの目安になります。

事故物件の賃貸運用が向いている人/向いていない人

事故物件の賃貸運用が向いているかどうかを考えている人たちのイラスト

ここまで見てきたように、事故物件を賃貸に出すのは「とりあえず家賃を手に入れる」だけの話ではありません。ここからは、賃貸運用が向いている人・向いていない人の違いと、物件を手放すための「売却」という選択肢についても触れていきます。

賃貸運用が向いているオーナーの特徴

事故物件の賃貸運用が現実的な選択肢になりやすいのは、次のような方です。

  • すでに他にも賃貸物件を持っていて、入居者対応や家賃滞納、設備トラブルなどの経験がある
  • 遺品整理・特殊清掃・リフォームなどの初期費用を、手持ち資金で一括負担しても生活に大きな影響が出ない
  • 「この家に何年くらい人に住んでもらうか」「その後はどうするか」といった、出口のイメージがある程度持てている
  • 親の家としての思い入れが強く、「多少コストがかかっても残したい」という気持ちが自分の中ではっきりしている

つまり、家賃が相場より下がったり、空室期間が出たりしても、「それも含めて大家業」と割り切れる方には賃貸運用が向いている可能性があるということです。

賃貸が向いていない/慎重に考えたほうがよいオーナーの特徴

一方で、次のようなサインが複数当てはまる場合は、賃貸運用には慎重になることをおすすめします。

 

金銭面のサイン
  • いまの時点でも固定資産税や管理費が負担に感じており、「これ以上の出費は正直きつい」と思っている
  • 遺品整理や特殊清掃、リフォームの見積もりを聞いただけで「とても払えそうにない」と感じてしまう
実務・時間面のサイン
  • 不動産管理や入居者対応の経験がなく、電話一本・トラブル一件を想像しただけで気が重くなる
  • 本業や子育てなどで手一杯で、「自分が大家として動く時間」はほとんど取れそうにない
精神面のサイン
  • 親族が亡くなった現場に足を運ぶこと自体がつらく、この家のことを考えると気分が沈んでしまう
  • 「近所にどう思われているか」が常に気になり、「ここに知らない人を住まわせること自体に抵抗がある」と感じている

上記のような状態の方が「とりあえず賃貸で様子を見る」ことを選ぶと、決断を先延ばしにする代わりに、長期の精神的負担と大家としての責任の両方を抱え続けることになりがちです。無理に賃貸を選ばない、というのも立派な選択肢です

賃貸に出すか迷ったら専門業者への売却も視野に

ここまで整理してみて、「賃貸で様子を見る」よりも「この家の心配から早めに解放されたい」という気持ちのほうが強いのであれば、売却して手放すことも十分に現実的な選択肢です。

売却と一口に言っても、やり方はいくつかあります。時間をかけて一般の買主を探す仲介での売却もあれば、事故物件や孤独死案件の扱いに慣れた専門業者に買取を相談する方法もあります。専門の買取業者であれば、比較的短期間での現金化に対応していることが多く、特殊清掃や遺品整理もまとめて引き受けてくれるところもあります。

「賃貸で頑張るか」「売却で手放すか」の正解は、人によって違います。ただ、「もうこの家のことで悩み続けたくない」という感覚がはっきりしているなら、堂々と売却を検討してよい段階だと思っていただいて大丈夫です。

 

まとめ:事故物件を賃貸に出すか迷ったら専門業者に相談しよう

事故物件の買取業者が賃貸や売却についての相談を促すイラスト

 

事故物件を賃貸に出すか迷ったときの判断ポイントまとめ

  • 事故物件かどうかは、死因・発見までの時間・室内の損傷や臭気を総合して判断する
  • 事故物件として賃貸に出す場合、家賃は相場より2~3割下げても空室が長引く可能性があり、家賃収入は当てにしすぎないほうがよい
  • 賃貸に出すには、遺品整理・特殊清掃・リフォームなどの初期費用と、その後の固定資産税や管理費といった継続コストを覚悟する必要がある
  • 賃貸運用が向くのは、資金・時間・経験に余裕があり、「それでもこの家を残したい」という意思がはっきりしているオーナー
  • 賃貸か売却か迷うときは、一人で抱え込まず、事故物件に詳しい専門業者に相談して、両方の数字と選択肢を整理してみるとよい

事故物件をどうするかは、お金の問題だけでなく、時間や気力、そして気持ちの整理とも深く関わってきます。

もし今、「賃貸で様子を見るべきか」「思い切って手放すべきか」を一人で抱え込んでいるのであれば、いったん数字と第三者の意見を入れてみるのもひとつの方法です

実際に、

 

  • いまの状態で売却するとしたら、どのくらいの価格帯が現実的なのか
  • 賃貸に出した場合に見込める家賃と、空室リスクを踏まえた収支イメージはどうか

 

といったところが見えてくるだけでも、「何となくの不安」から「比較検討できる状態」に変わっていきます。

手放すかどうか迷っている方も、まずは「売ればいくらになるのか」を知ることが大切です。
売却額を把握すれば、次の一歩をより現実的に考えられます。

ラクウルの査定エキスパートがお客様の大切な不動産を正確に評価いたしますので、以下の無料査定フォームからお気軽にご相談ください。

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この記事のまとめQ&A

事故物件でも賃貸に出すことはできますか?

事故物件であっても、賃貸に出すこと自体は可能です。ただし、死因や発見までの状況、室内の損傷や臭気の程度によって「事故物件」として扱われるかどうかが判断され、告知義務や募集条件に影響します。

事故物件を賃貸に出す場合、家賃はどのくらい下げる必要がありますか?

実務上は、同じエリア・同条件の通常物件と比べて、相場より2~3割ほど家賃を下げて募集されるケースが多く見られます。ただし、事故の内容や物件の種類、立地によっては、さらに空室期間が長引く可能性もあります。

事故物件を賃貸に出す前に、どのような費用がかかりますか?

賃貸に出す前には、遺品整理、特殊清掃、リフォームなどの初期費用が必要になることがあります。規模や状態によっては数十万円から、内容次第では100万円以上かかるケースもあり、募集前にまとまった支出が発生する可能性があります。

事故物件を賃貸に出した後も、どんな負担が続きますか?

賃貸に出した後も、固定資産税や管理費などの固定費がかかり続けます。また、空室期間が長引くリスクや、告知内容を巡る入居者からの質問・不安対応など、金銭面と精神面の両方で継続的な負担が発生します。

事故物件の賃貸が向いていない場合、売却を選ぶのは間違いですか?

賃貸が向いていないと感じる場合に、売却を選ぶことは間違いではありません。初期費用や空室リスク、精神的な負担を抱え続けるよりも、事故物件に詳しい専門業者へ相談し、買取などで早めに手放すことで負担から解放されるケースもあります。

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