
目次
所有されている大切な物件が事故物件になってしまった、あるいは意図せず相続することになった場合、今は「これからどうすればいいのか」「誰に相談すればいいのか」と、大きな不安の中にいらっしゃるかもしれません。
特に気がかりなのは、通常の不動産と比べて、いったい価格はいくら下がってしまうのか、という売却相場(値引き率)の問題ではないでしょうか。
この記事では、そうした不安を少しでも和らげ、落ち着いて次の一歩を考えられるように、売却相場の目安や関連する費用について、必要な情報を整理しました。後悔のない売却のために、ぜひ参考にしてください。
※本記事は、2025年12月時点で確認できる法令・制度・公表資料をもとに作成しています。
この記事でわかること
- 孤独死・自殺などケース別の値引き相場の目安
- 「仲介」と「買取」どちらを選ぶべきかの判断基準
- 建物を解体して「更地」で売る場合の注意点
- 特殊清掃や損害賠償など、売却以外にかかる費用
- トラブルを避けて売却するための2つの重要ポイント
目次
事故物件の売却相場は通常よりどれくらい下がる?値引き率の目安

所有されている物件が事故物件となってしまった際、最大の不安は「いったい相場はどれくらい下がってしまうのか」という点だと思います。まずは、孤独死や自殺といったケース別に、具体的な値引き率の目安を見ていきましょう。
1.1【ケース別】事故物件の値引き率の相場
事故物件の値引き率は、一律に「いくら下がる」と決まっているわけではありません。なぜなら、どのような経緯で亡くなられたのか、発見までの期間はどれくらいかによって、次に住む方が感じる心理的な抵抗感が大きく異なるからです。
あくまで目安ではありますが、一般的には以下のような傾向があります。
| 事故の内容 | 値引き率の相場 |
|---|---|
| 孤独死(自然死・病死で発見が早い) | 1~2割引 |
| 孤独死(発見が遅れ、特殊清掃が必要) | 2〜3割引 |
| 自殺・他殺(特に世間の注目度が高い事件) | 3〜5割引 |
例えば、室内での孤独死(自然死や病死)で、発見が比較的早く、お部屋の状態も良好な場合は、通常相場の1〜2割引程度で売買されるケースがあります。
しかし、同じ孤独死であっても発見が遅れ、特殊清装が必要となった場合は、心理的な抵抗感が強まるため、2〜3割引程度が目安となります。
さらに、自殺や他殺、火災による死亡など、事件性が高い場合や世間の注目を集めてしまった場合は、抵抗感が最も強くなるため、相場は3〜5割引(半額程度)になることも覚悟しなくてはならないかもしれません。
1.2 マンション・戸建て・アパート|物件種別による相場の違い
事故物件の相場は、マンション(区分所有)、戸建て、アパート(一棟)といった物件の種別によっても影響の度合いが変わります。
マンションの場合、事故が起きたのが室内(専有部)であれば、主にその部屋の価格が値引きの対象です。廊下やエントランスといった共用部での事故であれば、個々の部屋の資産価値への影響は比較的小さくなります。
一方、戸建てやアパート一棟の場合は、マンションの一室に比べ、値引き率が高くなる傾向があります。事故が起きた部屋だけでなく、建物全体と土地そのものが心理的瑕疵の対象として見られ、物件全体の資産価値が下がりやすくなるためです。
特にアパート経営(収益物件)の場合、影響はより深刻になります。事故のあった部屋以外にも、他の部屋の入居者が退去したり、新規募集が困難になったりするリスクがあり、収益性そのものが大きく低下する可能性があるからです。
1.3 なぜ価格が下がる?心理的瑕疵が相場に与える影響
事故物件の価格が下がる主な理由は、心理的瑕疵(しんりてきかし)があるためです。
瑕疵とはキズや欠陥を意味しますが、心理的瑕疵は、雨漏りやシロアリ被害のような物理的な欠陥ではありません。これは、過去にその物件で起きた出来事(人の死など)を知った買主が感じる、住みたくないという心理的な抵抗感のことを指します。
例えば、室内で自殺や他殺、火災による死亡事故などがあった場合、多くの人はそこに住むことに抵抗を感じます。この心理的な抵抗感が、売却時や賃貸時に相場よりも価格を下げざるを得ない直接的な要因となるのです。
そして不動産取引では、この心理的瑕疵の存在を隠さずに買主に伝える義務(告知義務)が定められています。
「仲介」と「買取」どちらを選ぶべき?売却方法別の相場

事故物件の相場を把握したところで、次に考えるべきは「どう売るか」です。主な売却方法には「仲介」と「買取」があり、それぞれ相場も特徴も異なります。
ご自身の状況に合うのはどちらか、両者の違いを詳しく見ていきましょう。
2.1「仲介」で売却する場合の相場とメリット・デメリット
「仲介」とは、不動産会社に依頼し、その物件を購入したいという一般の個人の方や法人を探してもらう売却方法です。
メリット
- 買取よりも高く売れる可能性がある
デメリット
- 買い手が見つかりにくい
- 買主候補へ経緯を説明する精神的負担が大きい
- 売却後も「契約不適合責任」によるトラブルリスクが残る
仲介の最大の利点は、買取と比べて、より高い価格で売れる可能性がある点です。売却相場は、前の章で解説した「通常相場の1~5割引」がひとつの目安となります。
一方で、事故物件であるという特性上、買い手は一般的な物件より見つかりにくく、売却までに時間がかかることを覚悟する必要があります。
さらに、告知を行わず売却後に物件の欠陥(心理的瑕疵を含む)が見つかった場合に、売主が責任を負う「契約不適合責任」のトラブルリスクが残る点も、大きなデメリットと言えるでしょう。
2.2「買取」で売却する場合の相場とメリット・デメリット
「買取」とは、事故物件の取り扱いを専門とする不動産会社(買取業者)に、物件を直接買い取ってもらう方法です。
メリット
- 短期間(数日〜数週間)で現金化できる
- 周囲に知られずに売却できる
- 「契約不適合責任」が免除されることが多い
- 仲介手数料が不要
デメリット
- 仲介よりも売却価格が安くなる
買取の最大の利点は、売却スピードです。買い手を探す必要がないため、最短数日で現金化できる場合もあります。また、広告活動を行わないため近所に知られず、売主の契約不適合責任も免除されるケースがほとんどです。加えて、買主が不動産会社のため、仲介手数料もかかりません。
一方で、価格が仲介よりも安くなる点が最大のデメリットです。これは、買取業者が物件を買い取った後、リフォームや特殊清掃を行い、再販売するための費用や自社の利益をあらかじめ差し引いた金額を提示するためです。
2.3「仲介」と「買取」どちらを選ぶべきかの判断基準
仲介と買取、ご自身の状況ではどちらが適しているでしょうか。判断に迷う場合は、以下の基準を優先順位と照らし合わせてみてください。
仲介が向いている人
- 少しでも高い価格で売却したい
- 売却を急いでおらず、時間に余裕がある
- 買主候補への説明などの手間をいとわない
買取が向いている人
- とにかく早く手放したい・現金化を急いでいる
- 近所に知られずに売却を完了させたい
- 買主候補への説明や交渉といった手間を避けたい
- 売却後のトラブルリスク(契約不適合責任)をなくしたい
特に、相続によって意図せず事故物件の所有者となった場合、物件が遠方にある、あるいは精神的な負担から早く解放されたいという思いが強い方も多いでしょう。
そのような場合は、価格は下がっても、確実に・早く・手間なく売却できる「買取」を選択する方が、結果的に満足度が高くなるケースも少なくありません。
「価格」を最優先するのか、それとも「売却の早さ」や「手間のなさ」を重視するのか。ご自身の状況に照らし合わせて判断することが、後悔のない売却につながります。
事故物件を解体して更地で売る場合の相場

仲介でなかなか買い手が見つからないと、「いっそ建物を解体して、更地(さらち)にしてはどうだろう」と考える方もいらっしゃるでしょう。
建物がなくなれば、心理的な抵抗感も薄れそうに思えますが、実は注意点もあります。更地にして売却する場合の相場や、メリット・デメリットについて解説します。
3.1更地にしても心理的瑕疵は残る
「建物さえ解体すれば、事故物件ではなくなるのでは」と期待されるかもしれません。 しかし、まず知っておいていただきたいのは、建物を解体しても心理的瑕疵はなくならない、という点です。建物がなくなっても、その土地で過去に人の死があったという事実は変わらないためです。映画の残穢(ざんえ)では土地の心理的瑕疵が描かれていました。
実際に、土地の売買においても、心理的瑕疵の有無が問題となった裁判例があります。そのため、更地として売却する場合でも、売主として買主へ事故の経緯などを伝える告知義務は基本的に残ります。
とはいえ、建物がそのまま残っている状態に比べれば、買主が感じる抵抗感は和らぐ傾向があります。買主が自由に新築住宅を建てられるというメリットが大きいため、建物付きの状態よりも売却しやすくなる可能性は十分にあるでしょう。
3.2 更地で売る場合の相場とメリット・デメリット
更地にして売却する場合の相場は、近隣の土地価格からおよそ1〜3割程度の値引きが目安です。事故の内容や土地の条件にもよりますが、建物が残っている状態よりも心理的な抵抗感が和らぐため、結果的により良い条件で売れる可能性もあります。
メリット
- 買主が新築用地として検討できるため、買い手が見つかりやすい
- 建物の管理維持費が不要になる
デメリット
- 建物の解体費用が別途発生する
- 固定資産税が最大6倍になるリスクがある
メリットは、買主が自由に新築住宅を建てられる「新築用地」として販売できるため、買い手の幅が広がることです。また、売主にとっては、老朽化した空き家を管理する手間や費用(火災保険料、修繕費など)がなくなる点も大きいでしょう。
一方で、注意すべき点もあります。まず、木造戸建ての場合100万円〜300万円程度にもなる解体費用を、売主が負担する必要があります。さらに気をつけたいのが固定資産税です。建物が建っていると適用される「住宅用地の特例」(税金の優遇措置)が、更地にすると使えなくなります。その結果、200㎡の土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があるのです。
解体したものの買い手がつかない期間が長引くと、税金の負担が急に重くなってしまいます。解体するタイミングは、不動産会社とよく相談することをおすすめします。
売却価格以外にも!事故物件にかかる費用の相場

事故物件の売却では、価格が下がることに加え、処理のために別途費用がかかる点にも注意が必要です。特に発見が遅れた場合の「特殊清掃」や、賃貸だった場合の「損害賠償」など、売却前に発生しうる主な費用の相場も知っておきましょう。
4.1 特殊清掃費用の相場
室内で孤独死があった場合でも、発見が早くお部屋の状態が良好であれば、通常のハウスクリーニングで済むこともあります。 しかし、遺体の発見が遅れてしまうと、体液の除去、強烈な臭いや害虫の駆除など、専門的な技術を要する「特殊清掃」が必要になります。
費用は部屋の広さや状況によって大きく変動しますが、目安は以下の通りです。
| 間取り | 特殊清掃費用の目安 |
|---|---|
| ワンルーム・1K | 5万円程度〜 |
| 1LDK〜2LDK | 10万円〜20万円程度〜 |
| 3LDK以上 | 20万円程度〜 |
【状況によって追加される費用】
- 残置物(家財道具)の撤去費用
- 壁紙や床板の張り替え(リフォーム)費用
- オゾン脱臭などの徹底した消臭・消毒作業費
これらはあくまで目安です。室内の汚染状況や臭いの強さなどによって、総額が数十万円から、場合によっては100万円以上になるケースも珍しくありません。
4.2 (賃貸の場合)家主への損害賠償の相場
もし被相続人が「賃貸物件」でお亡くなりになった場合、相続人であるあなたが、物件のオーナー(家主)から損害賠償を請求される可能性があります。 これは、部屋を元の状態に戻す「原状回復義務」や、事故によってオーナーが被った損害を賠償する義務を、相続人が引き継ぐことになるためです。
賠償内容として請求される可能性のある項目は、主に以下の2つです。
特殊清掃費用や、汚損した壁紙・床の張り替え費用など、部屋を元に戻すためにかかった実費。
部屋が事故物件となったことで、オーナーが家賃を下げざるを得なくなったり、次の入居者が決まるまで空室になったりした場合の損害(本来得られるはずだった家賃収入)。
特に2つ目の逸失利益については、一般的に「家賃差額の2年〜3年分」が相場として請求されるケースが見られます。
事故物件の売却で後悔しないための2つの重要ポイント

これまでに相場や必要な費用について解説してきましたが、最後に、事故物件の売却を成功させるための重要なポイントを2つ紹介します。不安な売却だからこそ、トラブルを避け、少しでも有利に進めるためにぜひ知っておいてください。
5.1 告知義務を必ず守りトラブルを防ぐ
事故物件を売却する際、トラブルを避けるために最も重要なのが「告知義務」を果たすことです。 これは、その物件で過去に人の死があったこと(心理的瑕疵)を、売主が買主に必ず伝えなければならない、というルールです。
心理的瑕疵があるという事実を隠して売却してしまうと、後から契約を解除されたり、損害賠償を請求されたりするなど、深刻なトラブルに発展しかねません。
ただし、告知義務の扱いは、売却方法によって少し異なります。 買主が一般の方である「仲介」では、過去に人の死があった場合は必ず告知しなければなりません。一方、専門の「買取」業者に売却する場合は、相手が不動産のプロであるため、売却後の責任(契約不適合責任)が免除されるのが一般的です。
5.2 事故物件に強い不動産会社・買取業者を選ぶ
適正な相場で売却するためには、相談する会社選びが鍵となります。事故物件の売買には、専門的な知識や特殊な販売ノウハウが求められるためです。
一般的な不動産会社に相談しても、取り扱いを断られたり、どう売ればよいか分からず、相場より極端に安い査定額を提示されたりするケースも少なくありません。
一方で、事故物件を専門に扱う不動産会社や買取業者は、独自の販売ルートを持っていたり、適切なリフォーム方法を熟知していたりします。そのため、物件の価値を正当に評価してもらえ、適正な価格で売却できる可能性が高いのです。
不安なまま一般的な会社に任せるより、最初から専門業者へ相談することがスムーズな売却への近道です。
まとめ:事故物件の相場を知り、後悔のない売却へ進むために

事故物件の売却相場についてのまとめ
- 相場の目安は1〜5割引
- 売却方法は「仲介」と「買取」の2択
- 売却価格以外の費用も考慮する
- 「告知義務」は必ず守る
- 「事故物件に強い買取業者」を選ぶ
所有されている物件が事故物件となってしまい、売却を考えなければならない状況は、精神的にも金銭的にも大きなご負担だと思います。何をどこから手をつければ良いのか、不安でいっぱいになるのは当然のことです。
しかし、一人で抱え込む必要はありません。まずはこの記事で解説したポイントを踏まえ、事故物件の取り扱いに慣れた専門の不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。専門家と話すことで、きっとご自身の状況に合った最善の道筋が見えてくるはずです。
手放すかどうか迷っている方も、まずは「売ればいくらになるのか」を知ることが大切です。
売却額を把握すれば、次の一歩をより現実的に考えられます。
ラクウルの査定エキスパートがお客様の大切な不動産を正確に評価いたしますので、以下の無料査定フォームからお気軽にご相談ください。
この記事のまとめQ&A
事故物件を売ると通常の物件と比べてどれくらい価格が下がりますか?
事故物件は通常の相場と比べて3割~5割程度下がるケースがあるとされています。
事故物件とされる建物を解体して“更地”として売却する場合はどうなりますか?
建物付きのまま売るより心理的抵抗感が和らぐ場合もありますが、土地であっても過去の事故の事実(心理的瑕疵)は残るため、必ずしも価格低下がゼロになるわけではありません。更地として売る場合の目安として「近隣土地価格からおよそ1割~3割程度の値引き」が目安とされています。
事故物件以外に売却前にかかる費用として知っておくべきものはありますか?
はい。特に、発見が遅れた事故物件では以下のような費用がかかる可能性があります:
・「特殊清掃費用」:ワンルーム・1Kで5万円程度~、1LDK~2LDKで10万円~20万円程度~、3LDK以上で20万円以上。状況が悪ければ100万円以上になるケースも。
・(賃貸物件の場合)「家主への損害賠償」:原状回復や次の入居者が決まるまでの家賃損失(逸失利益)などが発生することがあります。
事故物件を“更地”にして売るメリット・デメリットは何ですか?
【メリット】
・買主が新築用地として検討しやすく、買い手が見つかりやすくなる可能性がある。
・建物維持管理費が不要になる。
【デメリット】
・解体費用(木造戸建で100万円~300万円程度くらいのケースも)を売主が負担する必要がある。
・更地になると「住宅用地の特例」が使えなくなり、固定資産税が最大6倍になるリスクがある。



