コラム

事故物件の税金は安くなる?相続・売却で使える特例と節税方法

親が亡くなった家を相続したとき、事故物件として扱われれることで税金がどうなるのかは、よく問題になる論点です。

「安くしか売れない家なのだから、相続税も安くなるのではないか」という疑問を持つ方は多いものの、実際には、事故物件であっても相続税評価額は通常の物件と変わらないことがほとんどです。評価額が変わらないのに税負担を減らす方法もないのかと、納得がいかないのも無理はないでしょう。

ただし、評価額そのものは下げられなくても、税負担は「誰が取得するか・何を差し引くか・いつ売るか」で軽減できる可能性はあります。

本記事では、事故物件でも評価額が変わらない理由と、相続税・譲渡所得税それぞれで税額を減らすために使える制度を解説します。

 

この記事でわかること

  • 事故物件の相続税評価額の決まり方
  • 時価による減額申告が認められる条件
  • 相続税を減らせる特例と控除の範囲
  • 空き家特例と取得費加算の選び方
  • 特例の期限に間に合う売却時期

【相続税】事故物件でも相続税評価額は変わらない

事故物件の相続税評価額について解説する男性のイラスト

なぜ、実際には安くしか売れない事故物件に、通常の物件と同じ評価額が付くのでしょうか。答えは、相続税評価額の計算方法にあります。

 

1-1. 相続税評価額は路線価と固定資産税評価額で決まる

不動産の相続税評価額は、実際にいくらで売れるかではなく、路線価固定資産税評価額をもとに計算されます。

土地の評価方法には、路線価方式倍率方式の2つがあります。路線価方式は、路線価が定められている地域で使う方法です。路線価(道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額)を土地の形状に応じた奥行価格補正率などで補正したうえで、面積を掛けて計算します。路線価が定められていない地域では倍率方式を使い、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて求めるのが基本です。

家屋は、固定資産税評価額に1.0を掛けて計算します。つまり、家屋の評価額は固定資産税評価額と同じ金額になります。

注目したいのは、物件で人が亡くなった事実は、相続税評価額の計算に含まれない点です。評価のルールを定めた財産評価基本通達にも、物件の中で人が亡くなったことを減額理由とする定めはありません。

国税庁が示す「利用価値が著しく低下している宅地の評価」を使えば、評価額から10%を差し引ける場合があります。ただし対象になるのは、騒音・臭気・忌みなどで周りの宅地より不利になっている土地です。忌みとは墓地・火葬場・刑務所などが近隣にある場合を指し、物件の中で人が亡くなった事実は対象に入りません。

1-2. 時価が路線価を下回れば評価額の減額が認められる場合も

事故物件であっても、相続税評価額は原則として路線価や固定資産税評価額をもとに算出されます。ただし、事故物件であることによって時価(実際に売れる価格)が大きく下がり、路線価による評価額を下回る場合は、時価をもとに申告できる可能性があります。

路線価は、公示価格(国が公表する土地取引の指標)の8割程度を目安に設定されています。そのため、通常は時価のほうが路線価より高く、路線価で計算した相続税評価額が時価を上回ることは多くありません。しかし、事故物件では売却価格が下落するため、この関係が逆転することがあります。

もっとも、事故物件であれば必ず減額が認められるわけではありません。裁判所は、特別な事情がなければ、路線価をもとにした評価で問題ないという立場をとっています。

事故物件の価格下落率は、孤独死・病死・自然死で1〜2割、自殺で1〜3割、他殺で3〜5割が目安とされています。特殊清掃を伴う孤独死であっても、下落幅が1〜2割程度であれば、時価が路線価による評価額を下回らない可能性があります。

時価で申告するには、不動産鑑定士に鑑定評価書の作成を依頼し、相続税の申告書に添付して価格の妥当性を示す必要があります。ただし、鑑定評価書を提出しても減額が認められるとは限りません。鑑定費用もかかるため、減額できる可能性と費用を比較したうえで判断しましょう。

【相続税】事故物件にも適用できる特例と債務控除

事故物件に適用できる相続税の特例や債務控除を説明する男性のイラスト

評価額は下げられなくても、相続税そのものを減らす方法はあります。確認したいのは、小規模宅地等の特例債務控除の2つです。

2-1. 小規模宅地等の特例は「家なき子」だけが使える

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた宅地を相続したときに、相続税評価額を減額できる制度です。特定居住用宅地等に該当すれば、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。

特例を使えるのは、宅地を取得した人が、被相続人の配偶者、同居していた親族、一定の条件を満たす別居親族のいずれかに当てはまる場合です。このうち、別居親族に関する仕組みは一般に「家なき子特例」と呼ばれます。

被相続人が一人暮らしで、配偶者や同居していた親族がいない場合は、家なき子の条件を満たす相続人が宅地を取得することで、特例を使える可能性があります。

家なき子として認められる条件は次のとおりです。

  • 相続開始前3年以内に、自分・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人が持つ家屋に住んでいないこと
  • 相続開始時に自分が住んでいる家屋を、過去に一度も所有したことがないこと
  • 申告期限までに遺産分割を終え、宅地を持ち続けること

相続人が1人で、その人が自分や配偶者の持ち家に住んでいる場合は、家なき子の条件を満たせないため特例を使えません。

相続人が複数いる場合、条件は物件ではなく宅地を取得する人ごとに判定されます。たとえば兄弟2人が宅地を2分の1ずつ相続し、一方だけが家なき子の条件を満たすときは、80%減額されるのは条件を満たす相続人が取得した持分だけです。条件を満たす相続人が宅地の全部を取得すれば、宅地全体が80%減額の対象になります。

なお、特例を使った結果として相続税がゼロになる場合でも、申告書を提出しなければ適用されない点には注意しましょう。申告期限は、死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

2-2. 特殊清掃費用は債務控除の対象外

相続税には、被相続人の借入金や葬式費用を遺産総額から差し引ける債務控除の仕組みがありますが、特殊清掃費用は債務控除の対象になりません。

理由は2つあります。1つは、債務控除の対象が、被相続人が亡くなったときにあった債務で確実と認められるものに限られるためです。特殊清掃費用は相続が始まったあとに相続人が発注した費用なので、要件に当てはまりません。もう1つは、葬式費用として控除できる範囲に清掃費用が挙げられていないためです。国税庁が示しているのは、火葬・埋葬・納骨にかかった費用などにとどまります。

3. 【譲渡所得税】特別控除と取得費で圧縮できる

事故物件を売却した際の譲渡所得税や特例を説明する男性のイラスト

相続した事故物件を売却して利益が出ると、譲渡所得税がかかります。

課税の対象になる譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費とは不動産を購入したときにかかった費用で、相続した不動産では、原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。譲渡費用は、仲介手数料など売却のために直接かかった費用です。

譲渡所得を減らすために検討したい制度が、空き家特例取得費加算です。ただし、同じ不動産の売却に両方を使うことはできないため、条件や節税額を比較してどちらか一方を選びます。

3-1. 空き家特例3,000万円控除の3つの条件

空き家特例は、相続した実家が空き家のまま放置されるのを防ぐために設けられた制度で、相続した家を売却したときの譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

適用条件は次の3つです。

  • 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた家屋であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物の登記がされている建物でないこと

被相続人が老人ホームに入居していたケース(平成31年4月1日以後の譲渡)でも適用できます。また、売買契約に基づいて、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主が耐震改修工事または取壊しを行った場合も対象です(令和6年1月1日以後の譲渡)。

一方で、相続から売却までの間に賃貸に出したり事業用に貸したりすると対象から外れます。相続人が一度でも実家に住んだあとに売却した場合も適用できません。なお、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、控除額が1人あたり2,000万円までになります。

売却の期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。制度自体も、令和9年12月31日までの譲渡が対象になっています。

3-2. 取得費加算は納めた相続税を取得費に足せる

取得費加算は、納めた相続税のうち、売却した不動産に関する分を取得費に足せる制度です。取得費が増えれば課税される譲渡所得が減るため、譲渡所得税を抑えられます。

対象になるのは、相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡です。申告期限が相続開始から10ヶ月なので、相続後3年10ヶ月以内が期限になります。

空き家特例とは併用できないため、両方の条件を満たす場合は、どちらを使うか選ぶ必要があります。

空き家特例は譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度であるのに対し、取得費加算は、売却した不動産に対応する相続税額を取得費に加える制度です。どちらが有利になるかは、譲渡所得の金額、加算できる相続税額、所有期間による税率などによって変わります。単純に控除額だけで決めず、実際の税額を試算して比較しましょう。

4. 売却時期は特例の期限から逆算して決める

事故物件の売却時期と税制特例の期限をイメージしたイラスト

売却を検討している場合は、特例を使うために「いつまで保有する必要があるか」と「いつまでに売却を終える必要があるか」を確認したうえで、売却活動を始める時期を決めましょう。

小規模宅地等の特例を使う場合は、相続税の申告期限まで宅地を保有し続ける必要があります。申告期限前に売却すると適用を受けられないため、売買契約や引渡しの時期を調整しなければなりません。ただし、売却査定や不動産会社への相談まで申告期限後に延ばす必要はなく、保有要件を満たせるよう売却日を調整しながら準備を進めることは可能です。

一方、譲渡所得税の特例には売却期限があります。空き家特例を使う場合は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取得費加算を使う場合は相続開始から3年10か月以内に売却を終えなければなりません。

タイミング 使う特例 売却時期の目安
いつから 小規模宅地等の特例を使う 相続開始から10か月経過後
いつから 小規模宅地等の特例を使わない 相続直後から
いつまで 空き家特例 相続開始から3年目の12月31日
いつまで 取得費加算 相続開始から3年10か月以内

事故物件だからといって、告知義務がなくなるまで3年間待つ必要はありません。国土交通省のガイドラインで「概ね3年間」とされているのは賃貸借取引であり、売買取引には告知義務がなくなるまでの期間が定められていないためです。3年待ったからといって、死亡の事実を告げずに売却できるようになるわけではありません。

むしろ、使っていない不動産を保有し続けると、固定資産税管理費用の負担が続きます。空き家特例を使う予定であれば、相続後に賃貸へ出したり相続人が住んだりすることもできないため、保有期間中に収入を得ることも困難です。

売却期限まで余裕があっても、先延ばしにするほど有利になるとは限りません。小規模宅地等の特例の保有要件を満たしつつ、選択する譲渡所得税の特例に間に合うよう、早めに査定や不動産会社への相談を始めましょう。

まとめ:事故物件の税負担は早めの相談で抑えられる

事故物件の税金や相続について専門家へ相談する様子のイラスト

 

この記事のまとめ

  • 事故物件でも、死亡の事実だけを理由に相続税評価額が下がることは原則としてない。
  • 時価が路線価による評価額を下回る場合は、鑑定評価をもとに時価申告できる可能性がある。
  • 一人暮らしの親の宅地では、条件を満たす相続人が取得すれば小規模宅地等の特例を使える場合がある。
  • 譲渡所得税は、条件や節税額を比較して空き家特例または取得費加算の一方を選ぶ。
  • 特例の保有要件と売却期限を確認し、期限に間に合うよう早めに売却準備を始めることが重要。

事故物件を相続しても、相続税評価額が下がるとは限りません。しかし、小規模宅地等の特例や空き家特例、取得費加算などを適切に活用すれば、税負担を軽減できる可能性があります。こうした制度には適用条件や期限があり、売却のタイミングによって利用できる特例が変わることも少なくありません。

事故物件の売却を検討しているなら、不動産会社だけでなく、税務や相続も含めて相談できる専門業者を選ぶことが大切です。

ラクウルでは、事故物件の買取だけでなく、提携する税理士・弁護士・司法書士と連携し、一人ひとりの状況に応じた解決方法をご提案しています。税金や相続の不安を抱えている方は、まずは無料相談をご利用ください。


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宅地建物取引士の資格を持つ、事件・事故物件を専門に扱ってきた経験豊富なスタッフが執筆しています。
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この記事のまとめQ&A

事故物件になると相続税評価額は下がりますか?

原則として下がりません。事故物件であっても相続税評価額は路線価や固定資産税評価額を基に計算されるため、物件内で人が亡くなった事実だけでは評価額は変わりません。

事故物件でも相続税評価額を時価で申告できる場合はありますか?

事故物件であることにより時価が路線価による評価額を大きく下回る場合は、鑑定評価書を添付して時価による申告が認められる可能性があります。ただし、必ず減額が認められるわけではありません。

事故物件でも小規模宅地等の特例は利用できますか?

利用できます。事故物件であることは適用を妨げません。被相続人の配偶者や同居親族、一定条件を満たす家なき子などが取得した場合は、小規模宅地等の特例を利用できる可能性があります。

事故物件を売却するときに使える税金の特例はありますか?

譲渡所得税では、空き家特例による3,000万円特別控除と取得費加算の特例を利用できる場合があります。ただし、同じ不動産の売却で両方を併用することはできないため、有利な制度を選択します。

事故物件は税制特例の期限を考えていつ売却すればよいですか?

小規模宅地等の特例を利用する場合は相続税の申告期限まで保有する必要があります。また、空き家特例や取得費加算には売却期限があるため、適用要件を満たせるよう早めに売却準備を進めることが重要です。

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